色留袖ってどんな着物?着用できる人や場面、黒留袖や訪問着との違いをわかりやすく説明
「色留袖」といえば礼装、いわゆるフォーマル用の着物です。
しかし、「黒留袖」は知っているけれど「色留袖」はよくわからない、誰がいつどこに着て行けるの?と疑問に思っている方が多いようです。
そこで、色留袖の特徴や着用できる人、場所、黒留袖や訪問着との違いなどを解説します。
色留袖とはどんな着物?
色留袖とは地色が黒以外の留袖のこと。
未婚・既婚を問わず着用できる礼装です。
色留袖は、主に結婚式で親族に着用されることが多いフォーマル用の着物です。
色や柄の種類が豊富なため、20代~80代まで年齢を問わず、自分にふさわしい一枚を見つけることができる着物といえます。
色留袖の生地は地模様のない縮緬(ちりめん)、地模様が織り出された紋意匠縮緬(もんいしょうちりめん)や綸子(りんず)、緞子(どんす)などが用いられています。
色留袖の特徴
色留袖は地色が黒色以外の留袖のこと。
上半身は無地で、裾まわりにのみ「絵羽模様」という縫い目で途切れることのない、一枚の絵のような柄付けになっているのが特徴です。
また、色留袖を結婚式で着用する場合には「比翼仕立て」にするのがマナー。
昔は留袖の下に白羽二重の着物を重ねて着ていましたが、現代では軽い、動きやすいなどの利便性を考え、衿・裾・袖口・振りに別布を縫いつけ、二枚重ねのように見せる「比翼仕立て」が主流になっています。
比翼がついている着物は格式が高い着物となり、五つ紋の色留袖に比翼をつけることで、もっとも格の高い正礼装の黒留袖と同格の着物となります。
色留袖が人気になった背景
留袖は婚礼衣装だった振袖の袖を短く切り、仕立て直したことから始まっています。
「袖を切る」という表現は「縁を切る」という言葉を連想させて縁起が悪いため、「袖を留める」と表現したことから「留袖」と呼ばれるようになりました。
黒留袖は西洋文化と戦争の影響で発展
留袖は本来、振袖をリメイクしたもの。
そのため地色はさまざまでした。
ところが、明治時代に西洋のブラックフォーマルという考え方が取り入れられると、留袖も黒地のものが正式なものと考えられるようになりました。
さらに昭和初期の戦時下では、華やかな婚礼衣装は鳴りを潜め、袂と裾に柄を入れた黒引き振袖を結婚式で着たあとは、黒留袖としてリメイクする質素倹約スタイルが喜ばれる時代に。
この影響で、黒留袖が礼装の主流になっていったとも考えられています。
色留袖は叙勲・褒章制度で注目
宮中では黒は喪服の色ため黒留袖を着ることはなく、皇族が和装の礼装として着用するのは色留袖でした。
一般の方でも叙勲などで宮中に参内する場合は色留袖を着用するのが慣例であり、叙勲・褒章制度が一般化して対象者の数が多くなったことから、色留袖を誂える方も増えていったようです。
この影響で黒留袖だけでなく、色留袖も礼装として定着していったと考えられています。
色留袖を着用する場面
現在の色留袖は、フォーマル用の着物として主に結婚式で親族に着用されることが多いです。
色留袖は、未婚既婚を問わないこと、色や柄が豊富なことから、60~70代のおしゃれな祖母世代や、黒留袖を着るには若い20代の姉妹など、幅広い世代の親族が結婚式で着用できる礼装となっています。
さらに、色留袖は叙勲や褒章を受ける場合にも着用できます。
色留袖は比翼を外せば、子どもや孫のお宮参りや七五三、卒業式や入学式などにも着用可能です。
色留袖の格付け
色留袖の格は紋の数によって変わります。
色留袖の紋の数には「五つ紋」「三つ紋」「一つ紋」の3種類があり、格式も紋の数によって変わります。
五つ紋がもっとも格式の高い正礼装、次いで三つ紋が準礼装、一つ紋は三つ紋よりも格の低い準礼装と、紋の数が少ないほど格が下がっていきます。
色留袖に「紋」は必要?
色留袖は礼装のため、着物の格式を表す紋は必要です。
昔の結婚式では、未婚の親族は黒留袖と同等の五つ紋の色留袖を着用する方がほとんどでした。
しかし最近は、新郎新婦の母親に花を持たせるため、あえて正礼装となる五つ紋は避け、準礼装となる三つ紋の色留袖を着用する親族が増えています。
また、結婚式自体もセミフォーマルやカジュアルスタイルが増えたことから、正礼装では格が高すぎるため、三つ紋や一つ紋の色留袖を着用するケースが増えているようです。
色留袖は結婚式で親族以外でも着用できる?
現在では結婚式でゲストとして招待された友人や同僚は訪問着、主賓格なら色留袖を着用する場合もありますが、主賓格で色留袖を着用する場合には、紋の数に気をつけましょう。以下で詳しく解説致します。
友人や同僚は訪問着が一般的
最近の結婚式では、親族が三つ紋や一つ紋の色留袖を着ているケースが増えてきました。
結婚式では、ゲストは親族よりも格を下げた装いをするのがマナーのため、親族が三つ紋や一つ紋の色留袖を着ている場合、ゲストは色留袖よりも訪問着を着用するほうがふさわしい装いとなります。
また、留袖を着ている人は親族や親戚関係と捉える方も多いため、ゲストが色留袖を着ていると紛らわしくなることから、最近のゲストは訪問着を着用するのが一般的になっています。
主賓格なら色留袖を着用する場合も
例外として、ゲストの代表である主賓や新郎新婦の上司や恩師、またその夫人などの場合は、色留袖を着用されることがあります。
主賓格として招待された場合、正礼装か準礼装で参列するのがマナーのためです。
主賓格として色留袖を着用して結婚式に参列する場合は、紋の数に気をつけましょう。
正礼装か準礼装といっても、「新郎新婦の母親と同格や他の親族より格上になってしまうことは避けるべき」という考え方もあり、最近は三つ紋や一つ紋の色留袖を着用されるケースが多いようです。
その一方で、「主賓なら五つ紋の色留袖で大丈夫」という意見もあり、結婚式の格、地域の慣習、新郎新婦やその親御さんの考え方、親族が着用する着物の状況などに合わせて、色留袖の紋の数を選ぶことをオススメします。
色留袖と「黒留袖」の違い
色留袖と「黒留袖」の違いについて、地色が黒以外の留袖を「色留袖」、地色が黒の留袖を「黒留袖」といいます。
黒留袖の特徴
黒留袖の特徴は、最も格が高い「正礼装(第一礼装)」のため必ず五つ紋が入っており、比翼仕立てにして着用します。比翼仕立てとは、衿・袖・裾などの裏側に白い生地を付け重ね着をしているように見せる仕立て方です。
黒留袖は結婚式や披露宴で新郎新婦の母親をはじめ、祖母や叔母、姉妹などの既婚親族や、仲人夫人など、新郎新婦に近い関係の方が着る、既婚女性の礼装です。
色留袖の特徴
色留袖の特徴は、黒以外の色が使用された留袖で、未婚・既婚を問わず着用することができます。
そのため、結婚式では主に未婚の親族が着用します。
色留袖は紋の数によって格が変わり、五つ紋を入れ、比翼仕立てにすることで黒留袖と同等の正礼装(第一礼装)になり、三つ紋や一つ紋は準礼装となります。
色留袖と「訪問着」の違い
色留袖と訪問着、どちらも絵羽模様が施されています。
色留袖は肩部分には柄が無く、裾部分にのみ柄が施されています。
訪問着は、肩から袖に流れるように柄が施されています。
そのため色留袖と訪問着の見た目の判断基準は、「下半身にだけ柄があるのが色留袖」「上半身・下半身ともに柄があるのが訪問着」と覚えておきましょう。
また、色留袖と訪問着では着物の格が違うため、着用できる場面も異なります。
色留袖は「礼装」として作られた着物のため、親族の立場で列席する結婚式や各種式典などでの着用が一般的です。
訪問着は基本的に「準礼装」「略礼装」といった着物として、幅広いシーンで着用可能です。
訪問着はゲストとして招かれた結婚式や披露宴、子どもの卒業式や入学式、お宮参りや七五三、観劇やコンサート、友人との食事会や同窓会などで着用します。
色留袖に合わせる帯とは?
色留袖には格の高い着物にふさわしい金や銀、あるいは白の地色に、金糸銀糸の織り柄が入った重厚感のある袋帯を合わせます。
柄行は格調の高い有識文様や正倉院文様、縁起の良い吉祥文様などが主流。
「喜びが重なりますように」という願いを込めた縁起の良い「二重太鼓」を結びます。
色留袖の色や柄を意識して同じ色調や同じ柄などの袋帯を合わせると、美しいコーディネートになります。
色留袖に合わせる小物は?
礼装である色留袖に合わせる小物選びには決まり事があります。
長襦袢・足袋
色留袖を着る場合、長襦袢は白地のものを用意します。
地紋があってもかまいませんが、色物や色柄物は避けましょう。
足袋も白無地の足袋を履きます。色付きや刺繍入りの足袋はカジュアル用なのでNG。
半衿
色留袖に合わせる半衿は、白無地が基本です。
最近は白地に白や金、銀の糸で、鶴や桜、松竹梅などの刺繍の入っているものを用いる方もいますが、衿元がうるさくならないように気をつけて。
留袖は比翼仕立てになっているため、重ね衿は使用しません。
ただし、一つ紋の比翼仕立てではない色留袖を結婚式に着用する場合に、白の重ね衿を利用することがあります。
帯締め・帯揚げ
色留袖に合わせる帯揚げは綸子や縮緬の白地に、金糸や銀糸で刺繍が施されているものを合わせます。
帯締めも白地に金糸や銀糸が施された平織りで、格の高さと高級感が感じられるものを選びましょう。
草履とバッグ
草履はかかとの高いものが礼装用です。
かかとの高さが4cm以上はあるものを選びましょう。
素材はエナメル、布製、皮革など、色は白や銀、金を基調にしたものを。高級感のある佐賀錦や唐織、綴織などの豪華な織物生地のものでもいいでしょう。
バッグは草履とお揃いのものを選べば、洗練された印象になります。
例えば、佐賀錦の草履には佐賀錦のバッグを合わせて、豪華さを演出しましょう。
末広(祝扇子・祝儀扇子)
留袖を着用する時には、「末広」というお祝い事に用いられる扇子が必要です。
昔からの縁起物で、頭が数cm出るように帯と着物の間に差します。
手に持つときは帯よりも高い位置で持つこと、装飾品なのであおいだりしないように注意が必要です。
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まとめ
同じ留袖といえども、ミセスの正礼装でもっとも格の高い黒留袖とは異なり、色留袖は未婚既婚を問わず、紋の数で格付けが変わるため、黒留袖よりも着る人や活用範囲が広くなります。
とはいえ、訪問着のようにさまざまなシーンで活躍できる着物とは違い、現在の色留袖は主に結婚式における親族の礼装として着用する方がほとんどです。
また、色留袖に合わせる帯や小物にはしっかりとした決まり事があります。
まずは、この記事をしっかり読んで、色留袖を着用する時のマナーを覚えておきましょう。
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