夏の着物 単衣と絽の違いをわかりやすく解説
夏の着物として「単衣(ひとえ)」や「絽(ろ)」が挙げられますが、夏の着物に単衣と絽を同列に並べるのは間違った解釈です。
単衣とは着物の仕立て方のことで、絽は生地の織り方のこと。
また、単衣は初夏の6月と晩夏の9月に着る着物で、絽は7月・8月という真夏に着る着物と、着ることのできる時期も異なっています。
そんな夏の着物としてひとくくりにされやすい、単衣と絽の違いを詳しく解説します。

夏の着物とは?

夏の着物とは、6月・9月に着る「単衣(ひとえ)」の着物と、7月・8月の盛夏に着る「薄物(うすもの)」の着物が該当します。
着物は季節に合わせたものを着ることが大切な装いのため、次のようなルールがあります。
10月~5月 | 袷(あわせ) | 二枚の生地を縫い合わせた生地。裏地あり |
6月・9月 | 単衣(ひとえ) | 一枚の生地のみ。裏地なし |
7月・8月 | 薄物(うすもの) | 透け感のある生地一枚のみ。裏地なし |
「単衣(ひとえ)」とは着物の仕立て方のこと

季節に合わせた着物のルールとして登場する「袷(あわせ)」や「単衣(ひとえ)」とは、着物の仕立て方のことをさしています、
夏に着る「単衣(ひとえ)」の着物とは、裏地をつけずに一枚の生地で仕立てられた裏地のない着物です。
裏地がないため袷に比べて風通しが良いのが特徴で、軽やかな着こなしができます。
単衣の着用時期は、これから暑くなる5月終わりから6月、またはだんだん暑さがやわらいでくる9月と、夏といってもいわゆる季節の変わり目に着用します。
「袷(あわせ)」の着物とは、裏と表、二枚の生地を縫い合わせた仕立て方の裏地のある着物です。
袷の着物は、主に10月〜5月の暑くない時期に着用します。
いわば一年のうちのほとんどが袷の着物を着ることになるため、一般的に着物と認識されるもののほとんどが袷の着物になります。
単衣に含まれる盛夏の「薄物(うすもの)」

裏地をつけない「単衣(ひとえ)」に仕立てられた着物のなかに、「薄物(うすもの)」と呼ばれる着物があります。
6月・9月に着用する「単衣(ひとえ)」は透け感のない一枚の生地で仕立てられるのが一般的ですが、「薄物(うすもの)」は、その名の通り薄くて透け感のある生地一枚で仕立てることで、7月・8月の真夏にも着物を涼しく着ることができます。
薄物の一種「絽(ろ)」とは生地の織り方のこと

絽(ろ) | もじり織 縞のように透けて見える | 夏用のフォーマル |
紗(しゃ) | もじり織 網の目のよう | 夏のセミフォーマルやカジュアルシーン |
麻 | 麻織物 | カジュアル |
「薄物(うすもの)」の中に含まれるのが、「絽(ろ)」や「紗(しゃ)」の着物です。
「絽(ろ)」や「紗(しゃ)」とは、着物の生地の織り方のことをいいます。
「絽(ろ)」の着物は「もじり織」の一種で、平織りに隙間を作る織り方をしているため、縞のように透けて見えるのが特徴で、絽の留袖や訪問着、付け下げや色無地などがあり、夏用のフォーマルに欠かせない着物として活躍してくれます。
「紗(しゃ)」の着物も「もじり織」の一種ですが、網の目のようになっているため絽よりもさらに透け感があり、夏のセミフォーマルやカジュアルシーンで利用されています。
ただし、「紗(しゃ)」の着物には6月・9月の単衣の時期に着用する、紗と紗、絽と紗を合わせて縫われた「紗袷(しゃあわせ)」という着物もあります。
絽や紗だけでなく、麻の着物も薄物に入ります。人気の高い上布のような通気性にすぐれた高級麻織物であっても、麻はあくまで夏のカジュアルシーンで着る着物となります。
夏の着物と「浴衣」の違いとは?

浴衣 | 夏の着物 | |
---|---|---|
仕立て | 単衣仕立て | 単衣仕立て |
衿種類 | バチ衿 | 広衿 |
長襦袢 | 長襦袢なくてOK | 長襦袢必要 |
TPO | 普段着・イベント着 | 絽ならフォーマルOK 紗ならセミフォーマルやカジュアルシーン 麻ならカジュアルシーンのみ |
夏の着物の定番といえば、「浴衣」を思い浮かべる方も多いと思います。
浴衣も夏に着る裏地のついていない着物、つまり単衣仕立ての着物ですが、浴衣はもともと部屋着や寝巻として使用されるものでした。
浴衣は、夏に着るほかの着物とは違い、浴衣は折返しがないバチ衿と呼ばれる仕様になっていること、着物の中で唯一、長襦袢を着なくてもよいとされているなど、着付けやすいのが特徴であり、浴衣とほかの着物との大きな違いと考えてよいでしょう。
最近は夏祭りや花火大会など、夏のイベント着として人気を集めていますが、浴衣はいまでも着物の中では普段着という扱いになります。フォーマルな場所、例えば、結婚式や祝賀会などには着ていくことはできません。
フォーマルシーンにはその場にふさわしい格の着物を着る必要があるため、単衣や絽の訪問着などを着ていくことをオススメします。

まとめ
いかがでしたか。
夏の着物として活躍してくれる「単衣(ひとえ)」と「絽(ろ)」の違いが理解できたでしょうか。
「単衣(ひとえ)」とは裏地をつけない着物の仕立て方のことで、6月や9月に着ることのできる透け感のない着物のこと。
一方、真夏のフォーマルに欠かせない「絽(ろ)」は、7月・8月に着る「薄物(うすもの)」と呼ばれる単衣仕立ての着物の一種で、透け感のある着物地の織り方のことをいいます。
単衣は主に6月と9月に着用する着物ですが、暑くなるのが早い最近は5月から着用する方も増えています。同じように6月から薄物を着用するケースも。
季節に合った着物を着ることは大切なルールですが、時代や気候に合わせて、着物を着る時期も少しずつ変化しているようです。



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