浴衣と着物の違いとは?その特徴を知って上手に着こなそう
浴衣と着物の違いは、着て行く場所や時期、生地や素材、身に着けるもの、歴史的背景です。
そういわれても、浴衣と着物の違いが今一つよくわからないという方も多いでしょう。そこで今回は、浴衣と着物の違いを具体的に紹介します。それぞれの特徴と良さを知り、浴衣だけでなく夏の着物も楽しんでみてはいかがでしょうか。
浴衣と着物の違いとは?
夏になると必ず話題になるのが、浴衣と着物の違いです。
いまでは、夏のお出かけ着として欠かせない浴衣ですが、そのはじまりは平安時代、お風呂に入るときに裸を隠すために身に着けるものでした。時代の移り代わりとともに、湯上りに着たり、寝巻として利用されることも。温泉旅館の部屋着や寝巻が浴衣なのは、その名残ともいえるでしょう。
そんな浴衣と着物の歴史的背景から見る成り立ちや役割の違いの他にも、浴衣と着物には、実際の生地や身に着けるものの違い、また、着て行く時期や場面の違いなどがあります。
浴衣と着物の違いが一目でわかる早見表
浴衣と着物がどう違うのかを具体的に表にまとめたので、参考にしてみてくださいね。
浴衣と着物の違い 徹底比較
浴衣 | 着物 | |
歴史背景 | 平安時代の風呂用の着衣 「湯帷子」 | 平安時代に十二単の下に着ていた 「小袖」 |
着用時期 | 6月~9月の夏だけ | 通年 10月~4月は袷 6月~9月は単衣 |
着用場面 | カジュアル | フォーマル セミフォーマル カジュアル |
生地 | 主に綿 綿麻、麻、ポリエステル | 主に正絹 麻、綿、ウール、ポリエステル |
仕立て方 | 単衣 | 袷(10月~4月) 単衣(6月~9月) |
帯 | 半幅帯 兵児帯 名古屋帯(八寸帯) | 袋帯 名古屋帯(九寸帯) 名古屋帯(八寸帯) 丸帯 京袋帯 半幅帯 |
着付け方 | 長襦袢不要 帯揚げ・帯締め不要 | 長襦袢、帯揚げ・帯締めを利用 浴衣よりも着付けの工程が多い |
足袋 | 履かない | 必ず履く |
履物 | 下駄 | 草履、雪駄、下駄 |
浴衣と着物の着用時期や着用場面の違いとは?
では、表組の内容をわかりやすく説明していきましょう。
浴衣と着物のもっとも大きな違いが、「着用する時期と、着て行ける場所や場面」です。
浴衣はいまでは夏のおしゃれアイテムとして、夏祭りや花火大会、納涼船、ビアガーデンなどの夏のイベントで着用されています。
つまり夏限定のカジュアルなイベント着であり、それ以外の季節に浴衣で外出することはほとんどありません。
最近は残暑が厳しいため、秋口のイベントでも浴衣を着ることはありますが、それでも、浴衣を着るのは暑い時期に限られているといっていいでしょう。
一方、着物には10月~4月に着る袷、6月・9月に着る単衣、7月・8月に着る薄物など、季節に合わせた着物があり、年間を通して着用することができます。
現代の着物は礼装や晴れ着として、結婚式や披露宴、パーティー、成人式など、フォーマルシーンで着用されるのが主流。お子さんのお宮参りや七五三、学校の入学式や卒業式などの式典でも着用されます。
着物の種類によってはフォーマルシーンだけでなく、観劇や美術館めぐり、レストランでの会食など、外出着として気軽に着て行けるものもあります。
浴衣と着物の素材や生地の違いとは?
次に挙げられる浴衣と着物の違いは「素材や生地」です。
浴衣は吸汗性にすぐれた綿が人気
暑い時期に着る浴衣は、主に木綿や麻などの汗や水分をしっかりと吸収してくれて、自宅でも洗濯しやすい素材で出来ています。
綿と麻を混合した高級素材などもありますが、その一方で、手軽でデザイン性にすぐれたポリエステルの浴衣も数多く登場しています。
着物は高級感のある正絹が主流
では、着物の生地はというと、フォーマルシーンで着用する着物のほとんどが正絹と呼ばれる最高級のシルクで出来ています。
また、シルクと見間違えるような高級感と光沢のあるポリエステルを使用したものも。
普段の外出時に着る洒落着には、通気性にすぐれた麻の夏着物や洗濯しやすいポリエステル、冬は暖かいウールの着物などもあり、季節や場面に合わせて着分けることができます。
浴衣と着物の身に着けるものの違いとは?
浴衣と着物のもうひとつの大きな違いが、「身に着けるものと着付け方」です。
浴衣は長襦袢不要、結びやすい帯も魅力
浴衣の着付けは着物と違って長襦袢を着ないため、着付けの手順が少なくなることが挙げられます。ただし、ブラジャーやショーツの上に直に浴衣を着てしまうと透けて見えるので、和装用の肌着や浴衣用の肌着を利用しましょう。
洋服の時に着ているタンクトップやキャミソール、下はステテコでも代用できます。
帯は半幅帯ややわらかい兵児帯など、初心者でも楽に結べるものを使用しているのも大きなポイント。
足元は足袋を履かずに裸足で下駄をはきます。
着物は半衿や帯揚げ·帯締めで華やかに
着物は基本的に、肌襦袢と裾除け、長襦袢を身に着けてから着るのが基本。
長襦袢には着物の衿が汚れるのを防ぐために、半衿をつけておくのも必要な作業。
と同時に、半衿の色や柄、素材などが、おしゃれなアクセントになります。
帯は袋帯や名古屋帯などを結びますが、帯を形作るために帯揚げや帯締めを使用。
その色や素材、帯締めに付ける帯留めなどが、着物姿を彩る装飾品にもなってくれます。
また、着物の場合、足袋は必ず履くのがマナー。
着物には着付けの作業が多い分だけ、浴衣よりもエレガントで華やかな装いを楽しめる良さがあります。
浴衣と着物の歴史から見る成立ちと役割の違い
浴衣と着物、いまでは一見すると同じように見えますが、その成り立ちや役割は大きく異なります。
浴衣のはじまりは「湯帷子(ゆかたびら)」
浴衣はもともと平安時代の貴族が蒸し風呂に入る時、水蒸気で火傷をしないように麻で作った「湯帷子(ゆかたびら)」を着たことがはじまりといわれています。
それが時代の流れとともにお風呂上がりの着衣となり、呼び方も「浴衣」に変わっていきました。
江戸時代に庶民が銭湯に通いはじめると、風通しが良く汗を吸ってくれる浴衣を入浴後に着るのが一般的に。いまでも温泉旅館などで浴衣を着るのは、この名残といえるでしょう。
やがて着心地の良い浴衣は夏の外出着として定着。
いまでは夏のイベントの装いとして、お祭りや花火大会、納涼船などで着られています。
着物のはじまりは「小袖」
一方、着物は言葉の通り「着る物」であり、衣服全般のことを指していましたが、
いまでは「着物とは和装のこと」という捉え方のため、浴衣も着物の一種となります。
そんな着物のはじまりも平安時代から。
宮廷で身分の高い女性が十二単の下に着ていた「小袖(こそで)」が、着物の原型といわれています。
江戸時代に一般庶民の間で着物文化が花開くと、着物はいまの形へと進化。
帯揚げ、帯締めを使ってさまざまな形に帯を結ぶなど、着物のルールの多くが江戸時代に誕生しました。
明治以降は洋服が普段着として普及し始め、着物よりも低価格で手軽に着られる衣服として洋服文化が浸透。その結果、着物は成人式や結婚式などの冠婚葬祭で着るフォーマルウエアという風潮になりました。
浴衣を卒業したら絽、紗、麻の着物を
浴衣は夏のおしゃれアイテムとして、すでに定番となっていますが、人気の理由は気軽に着られることだけではありません。
いつかは着物を着たいと思っている方が、手始めに浴衣に挑戦していることも多いようです。
最近では、浴衣に半衿や飾り紐などを利用して、あえて着物風にアレンジする方も。
さらに年齢とともに浴衣を卒業して、絽や紗、麻などの夏ならではの着物に挑戦する、という方も多くなっています。
レンタルなら準備や着付けの心配が不要に
着物は浴衣と違って、長襦袢や着付け用のさまざまな小物が必要となるため、
準備が大変と思っている方も多いようですが、
レンタルを利用すれば、肌着から小物まで、すべてがセットになっています。
着付けはどうするの?という問題もありますが、
いまは手軽に見ることが出来る着付けの動画や、
レンタルした着物セットと一緒に着付けの解説動画入りDVDが付いてくるところもあるので、
自分でチャレンジしてみるといいでしょう。
それでも着付けは不安という方に向けて、
きものレンタリエでは着付け体験キットを用意しています。
13泊14日もレンタルできるので、納得いくまで練習できますし、上手に出来たら着物姿でお出かけしてみるのも楽しいですよね。
まずはこのキットで実際に着物を着てみて、
この夏は浴衣から着物へとワンランクアップしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
浴衣は蒸し風呂で着る「湯帷子」、
着物は十二単の下で着る「小袖」がはじまりでした。
しかし今では、浴衣は夏のイベント時の外出着となり、大勢の方に愛用されています。
また、浴衣をきっかけに着物に興味を持った方たちは、もうワンランク上のおしゃれアイテムとして、薄物と呼ばれる盛夏の着物、絽や紗、麻の着物に注目しているようです。
すでに浴衣を着こなしている方は、この機会にそろそろ着物も楽しんでみませんか。