色留袖と訪問着の違いとは?覚えておきたい特徴と着こなし方をわかりやすく解説
色留袖と訪問着の違いは柄付けと着物の格、着用シーンにあります。
色留袖と訪問着の違いは、パッと見は似ていますが、実はかなり異なる特徴を持つ着物です。この機会にぜひ色留袖と訪問着の違いを覚えて、着物でのおしゃれの幅を広げる参考にしてみてはいかがでしょうか。
色留袖と訪問着の見分け方とは?
色留袖 | 上半身は無地、帯から下に絵羽模様 |
訪問着 | 上半身にも帯から下にも絵羽模様 |
色留袖と訪問着はどちらもフォーマル時に着用できる着物です。
そのせいか、色留袖と訪問着の違いがいま一つよくわからないという声を耳にしますが、実はひと目で違いがわかるポイントがあります。
それが柄の位置です。
色留袖も訪問着も、絵羽模様という着物の縫い目で途切れることのない、一枚の絵のように見える柄付けがされていますが、絵羽模様が色留袖は裾だけ(帯から下)にあしらわれており、訪問着は肩から裾にかけてあしらわれています。
要するに、「上半身は無地、帯から下に絵羽模様」なのが色留袖、「上半身にも帯から下にも絵羽模様」なのが訪問着なのです。
色留袖と訪問着の違いとは?
色留袖と訪問着の違いは柄の位置だけではありません。
では、何がどう違うのかを具体的に紹介していきましょう。
色留袖の特徴
縁起の良い柄が多い
色留袖は慶事に用いられる礼装のため、縁起が良いことを意味する柄が主流。
黒留袖とは異なりさまざまな地色があることから、明るい地色の着物を選べば、結婚式や披露宴を華やかに彩る装いとなります。
未婚・既婚問わずに着用できる
色留袖は、以前は黒留袖と同じように既婚女性の正礼装でしたが、現在は未婚既婚を問わずに着用することができるため、色留袖は結婚式での未婚の親族女性の礼装として定着しています。
比翼仕立てにすることで結婚式にふさわしい装いに
また、色留袖は比翼仕立てにすることで、結婚式にふさわしい装いになります。
これは留袖だけの決まりで、留袖なのに比翼仕立てでないと結婚式には不適切と思われてしまいます。
色留袖は紋の数によって着物の格が変わる
紋の数と色留袖の格
五つ紋 | 正礼装(第一礼装) | 黒留袖と同等 |
三つ紋 | 準礼装 | 結婚式では主に親族が着用 |
一つ紋 | 準礼装 | 結婚式ではゲストや親族が着用(注1) |
色留袖は紋の数によって着物の格が決まるのも特徴です。比翼仕立ての色留袖に五つ紋を入れると、黒留袖と同等の正礼装(第一礼装)になります。
比翼仕立てに三つ紋で準礼装となり、五つ紋の色留袖では格式が高すぎる結婚式などで親族が着用します。いとこやいとこの配偶者など、主催者側とはいえない立場の親族が着用することもできます。
比翼仕立てに一つ紋の色留袖は三つ紋よりも格下の準礼装となり、結婚式ではゲストが着用する着物といわれていました。
(注1)しかし最近は、ゲストが色留袖を着用すると親族と紛らわしくなるため、一つ紋の色留袖を着るゲストは少なく、訪問着を選ぶ方が増えてきました。
一方、三つ紋では格が高すぎてしまうセミフォーマルなどの結婚式では、親族が一つ紋の色留袖を着用する場合も。
比翼仕立てではない無紋の色留袖は訪問着と同じように着用できるといわれていて、子どもの入学式や卒業式などに着用できます。
ですが、色留袖を訪問着のように友人との食事会や趣味の集い、ショッピングなどの外出着として着用するのは難しく、色留袖はあくまでフォーマルシーンに着用する着物といえるでしょう。
訪問着の特徴
訪問着は既婚未婚を問わず、若い方から年配者まで着用できる便利な着物で、フォーマルシーンでは準礼装や略礼装として着用します。
色や柄の種類が豊富で、ファッション性が高い
訪問着は、古典柄からモダンなデザインまで、色や柄の種類が豊富で、ファッション性の高いのもポイント。
洋装に例えるならば、色柄などの選び方やコーディネート次第で、披露宴などに着られるドレスとしても、ちょっとお出かけ時のよそ行きのワンピースとしても着られる、フォーマル用の装いと考えるとわかりやすいでしょう。
幅広い着用シーン
訪問着の着用シーンは非常に幅広く、ゲストとして招かれた結婚式や披露宴、子どもの卒業式や入学式、お宮参りや七五三、観劇やコンサート、友人との食事会や同窓会など、さまざまな場面で着用できます。
最近は家紋を入れないのが主流
訪問着は、昔は一つ紋を入れて格を高めることもありましたが、最近は紋を入れないのが主流です。
格を求められるシーンでは、柄付けの選び方や、帯や小物の組み合わせで格調高く装うことが多くなっています。
色留袖と訪問着の着こなしの違いとは?
色留袖と訪問着では、着こなし方も異なります。
色留袖の着こなし
色留袖にあわせる帯は重厚感のある袋帯で、金地、銀地の錦織や唐織、綴織が一般的です。
袋帯の柄は格調の高い有職文様や正倉院文様、縁起の良い吉祥文様が織り出されたものを合わせます。
五つ紋、三つ紋の色留袖の場合は、白の長襦袢に白の半衿をつけ、白を基調にした帯揚げ・帯締めを合わせ、帯の左側に礼装用の扇子(末広)を差します。
草履やハンドバッグも金や銀が使われた礼装用のものを合わせます。
一つ紋の色留袖を着るときは、白だけでなく淡い色の帯揚げ、帯締めでも大丈夫ですが、色留袖にふさわしい品格のある着こなしを心がけましょう。
訪問着の着こなし
訪問着の着こなしは、着用する場面によって異なります。
結婚式のゲストとして訪問着を着用する場合、帯は色留袖と同様に重厚感がある金糸銀糸が施された格調高い袋帯、白地の半衿または白地に白糸や金銀糸で刺繍がほどこされた半衿、帯揚げ・帯締めなどの小物類にも白地や淡い色に、金、銀のものを合わせます。
草履とバッグも高級感のある金色・銀色を使用した礼装用となります。
子どもの入学式や卒業式、お宮参りなどの場合は、訪問着に上品な色合いに格調高い柄の袋帯を合わせます。
半衿は白が望ましく、帯揚げや帯締めは帯や着物に合わせた淡い色のものを選んでもいいでしょう。草履は白や淡い色合いで、礼装らしい高さのあるものを。
主役である子どもより、華美にならないことが大切です。
レストランでの食事会や観劇、趣味の集まりならば、訪問着に洒落袋帯や格の高い織りの名古屋帯を合わせてもOK。半衿は白だけでなく白地に刺繍入りや淡い色つきのものを選んだり、衿元をより華やかにしたいなら伊達衿を重ねることもできます。
着物や帯と相性の良い色の帯揚げ・帯締めに、高級感のある帯留めをつけるなど、おしゃれに楽しめます。
まとめ
色留袖と訪問着は見た目が似ているためまぎらわしくなりがちですが、上半身に柄のないものが色留袖と覚えておけば、ひと目でわかるようになります。
色留袖と訪問着には着物の格や着用シーンの違いがありますが、色留袖は主に結婚式で未婚の親族が着用するフォーマル用の着物、一方、訪問着は結婚式にゲストとして出席するときや、子どもの式典、お宮参りなどの行事、観劇や趣味の集いなど、フォーマルだけでなくお出かけ着としても着られる着物、と覚えておくとよいでしょう。