【黒留袖の家紋】をわかりやすく説明!数や位置、レンタルした場合はどうする?
結婚式に親族が着る黒留袖には、家紋が必ず五つ入っていることは、ご存じの方も多いのでは?
黒留袖の家紋には、どんな意味があるのか、自分の家の家紋は何なのか、詳しいマナーがよくわからないため、あわてて調べている方も多いようです。
中には黒留袖をレンタルしたいけれど、その場合、家紋はどうなるのかという心配をされている方も。
この記事では、そんな黒留袖の家紋についてご紹介します。
黒留袖に入れる家紋とは?
黒留袖に入れられている家紋には、いったいどんな意味があるのでしょうか。
その始まりは古く、平安時代の頃に貴族が自分たちの調度品や牛車などに、自分の好きな文様を目印としてあしらったのが由来といわれています。
これが戦国時代になると、家紋は戦のときに敵味方を見分けるための印として、武家の間にも広まることに。
現在、着物に使われている家紋の多くは、この武家紋が起源といわれています。
実際に着物に紋を入れることが定着したのは、封建制度が確立された江戸時代。
今まで以上に家柄や格式が重んじられるようになったことから、着物の家紋は礼儀の一つとして欠かせないものになりました。
そんな流れをくみ、いまでも慶事の正装である黒留袖と弔事の正装である喪服には、もっとも格式の高い五つ紋を付けることが決められています。
ただし、同じ留袖でも色留袖は三つ紋や一つ紋を付けることができ、略礼装として着ることができます。
家紋の数は数百種類もあるってホント?
家紋の文様は、中国から伝来したものが原型といわれています。
家紋のデザインは、植物の紋様をはじめ、建物や景色、生き物や自然、人物、道具、さらには幾何学模様など、400種類以上にものぼります。
もともとは貴族のものとして生まれた家紋でしたが、
江戸時代の後期にもなると家紋を持っていなかった庶民の間にも家紋が広まっていきました。
自分を表現するための植物や動物、文字、器物、天文などを図案化して、自分の家の紋にしたことから、家紋の数が増えていったといわれています。
自分の家紋がわからない場合はどうする?
核家族化が進んだこともあり、最近は自分の家紋がわからないという声も耳にします。
家紋が知りたいという場合には、まずは両親や父方の祖父母、ご高齢の親戚などに聞いてみるといいでしょう。
親戚の中でも、父方の本家の方なら知っている可能性が大。
親戚一同が写っている両親の結婚式の写真などから、見つけることもできそうです。
また、墓石には家紋が刻印されるのが一般的でしたから、
父方のお墓に行ってみたり、菩提寺に聞いてみるのもひとつの方法です。
それ以外にも仏壇や屋根瓦に家紋を入れることもあるので、
実家や本家の仏壇や屋根瓦を調べてみると、家紋を見つけることができるかもしれません。
黒留袖に家紋を入れる場合の数と技法
黒留袖の家紋は、最も格の高い5つ紋を入れて着用します。
着物に紋を入れる場合、五つ紋、三つ紋、一つ紋の3種類があり、紋の数が多いほど着物の格が上がります。家紋を入れる位置は、一つ紋は背縫いの中央に入れる「背紋」のみ。
三つ紋はこの背紋に加えて、両袖の後ろに「袖紋」を入れます。
黒留袖の家紋を入れる場合の五つ紋は背紋と袖紋に、両胸に入れる「抱き紋(胸紋)」が加わります。
また、家紋を入れる技法にも格があり、格の高い順から、生地の地色を染め抜く「染め抜き紋」、生地に型紙を当てて色を染める「摺り込み紋」、生地に直接刺繍をする「縫い紋」という3種類が使われています。
中でも、染め抜き紋には紋の形を白く染め抜く日向紋(ひなたもん)と、紋を輪郭だけで表現する陰紋(かげもん)があり、日向紋のほうが陰紋よりも格が高くなります。
黒留袖はお祝いの席だけに着るもっとも格式の高い第一礼装ですから、
当然、技法も格の高い染め抜きの日向紋、紋の数は最上格の五つ紋となります。
紋の大きさにも決まりがあって、男性の紋は直径約3.8cm、女性の紋は直径約1.9cmとなっています。
結婚したら黒留袖の家紋は変えるべき?
女性が結婚した場合、家紋はどうなるのでしょうか。
黒留袖は既婚者の第一礼装ですから、もともと嫁いだ先の家紋なのではと思われがちですが、結婚前に嫁入り道具のひとつとして黒留袖を用意していた場合は、実家の家紋を入れていることも多いようです。
また、母親や祖母から黒留袖を受け継いだという方もいるでしょう。
そのため、結婚したことで実家の家紋を嫁ぎ先の家紋へと染め替える場合もあります。
そんなことができるの?と思いますが、黒留袖の紋は、すでに入っている紋を消して、紋を入れる前の状態に戻し、新たな紋を入れることができるのです。
では、結婚後は嫁ぎ先の家紋に変えるべきなのかといえば、必ずしもそうではありません。
どちらの家の紋にするか明確な決まりはないため、
黒留袖の家紋をどうするかはその地域やそれぞれの家の考え方になるのです。
例えば関西では、母から娘、娘から孫娘へと、結婚して姓が変わっても代々、
母方の紋を女性だけが受け継いでいく「女紋」という風習がある地域も。
最近では、家紋についてまったく興味がない家もあれば、今でも先祖代々の紋を守らねばならないと考えている家もあるため、自分ひとりで決めてしまうのではなく、まずは実家とも嫁ぎ先とも相談のうえ、黒留袖にどちらの紋を入れるのかを決めたほうがよいでしょう。
黒留袖をレンタルした場合、家紋はどうなるの?
昔は嫁入り道具のひとつだった黒留袖ですが、最近はレンタルするのが一般的。
では、レンタルの場合、黒留袖の家紋はどうなるのでしょうか。
レンタルショップによっては、シールのように上から貼り替えられる「貼り紋」で、希望の紋を一時的につけてくれるところもありますが、ほとんどのレンタルショップが「通紋」といわれる、誰がつけても問題のない便宜上の家紋を利用しています。
代表的なのが「五三の桐」という紋で、誰でも一度は目にしたことがあるほどオーソドックスな家紋といえるでしょう。
前述したとおり、黒留袖に入れる家紋に対して厳格な決まりはありませんから、
結婚式に参列するときに自分の家紋と違う紋を入れていても、決してマナー違反にはなりません。
しかし、「五三の桐」だとレンタルの黒留袖だと周囲にわかってしまうのではないかと心配な方や、先方の親族も黒留袖をレンタルするため家紋が被ってしまうのが気になるという方もいるでしょう。
そんなときには、きものレンタリエの黒留袖のように、女性らしい「丸に花菱」の通紋を用意しているところもありますから、どんな通紋を使用しているかも調べたうえで、黒留袖をレンタルすることをおすすめします。
まとめ
結婚式で着る第一礼装の黒留袖は、その家を代表する着物といっても過言ではありません。
実家の紋のままでよいのか、嫁ぎ先の紋を受け継ぐのか、明確な決まりがないこともあり、黒留袖に入れる家紋をどちらにするのかは、両家の親御さんと相談してから決めることが大切です。
黒留袖のレンタルを利用する場合は、自分の家紋ではなく誰でも付けられる通紋が一般的です。
通紋はマナー違反ではありませんので、自分の家紋と異なることを気にすることなく、堂々と結婚式に参列しましょう。
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