結婚式で留袖を親族が着るには?知っておきたい基本ルールをわかりやすく説明
結婚式で留袖を着るのは新郎新婦の親族です。
母親は黒留袖、未婚の姉妹や伯母・叔母なら色留袖と、結婚式の留袖には着用するためのルールがあります。
では、結婚式で留袖は、親族以外の人は着られないの?と疑問に思う方も多いでしょう。
そこで、結婚式で留袖を着用するための基本ルールを紹介します。
留袖とはどんな着物?
留袖とは、もともとは振袖の袖を短くして「留めた袖」を持つ着物のことをいいます。
江戸時代の女性は、既婚者になると振袖の袖を短くして、縫い留めた着物を着ていました。
「袖を留める」と表現するのは、「袖を切る」から縁を切るという言葉を連想させるからだそうです。
明治時代に西洋のブラックフォーマルをまねて黒の留袖を礼装用にしたことから、いまでも留袖はもっとも格の高い礼装用の着物であり、主に結婚式で親族が着用する着物と考えられています。
また、留袖には黒留袖と色留袖の2種類があります。
黒留袖と色留袖の違いとは?
それでは、黒留袖と色留袖は何が違うのでしょうか。
黒留袖とは?
黒留袖とは地模様のない黒地に、裾にだけ絵羽模様があしらわれた着物のこと。
既婚者だけが着ることのできる着物であり、必ず染め抜き日向紋の五つ紋を入れることから、既婚者が着用する着物の中でもっとも格の高い正礼装(第一礼装)として、主に結婚式や披露宴で利用されています。
黒留袖は比翼仕立てにするのが一般的です。
昔は「めでたいことをかさねる」という意味を込めて、白羽二重の着物を重ね着していましたが、暑くて重く、動きにくいため、いまでは着物の衿や袖口、裾などに比翼地をつける簡略したスタイルに。比翼がついている着物は、格の高い着物であることも表しています。
色留袖とは?
色留袖は地色が黒以外の留袖のこと。
無地のものと地模様のものがあり、黒留袖と同じように着物の裾だけに絵羽模様があしらわれています。
色留袖は黒留袖と異なり、未婚でも既婚でも着用できる礼装で、比翼仕立ての色留袖に五つ紋を付けることで、黒留袖と同等の正礼装になります。
しかし、黒留袖のように必ず五つ紋を付けるわけではなく、三つ紋や一つ紋の準礼装としても着用することができます。
黒留袖とは異なり、さまざまな地色の着物があるため、柄の選び方や帯との合わせ方次第で華やかな装いになります。
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結婚式で留袖を着られるのは誰?
留袖は、主に新郎新婦の親族や近親者が着用する礼装です。
では、実際の結婚式では誰が黒留袖、色留袖を着用するのか具体的に紹介しましょう。
黒留袖は新郎新婦の母親が主流に
結婚式で黒留袖を着用できるのは、新郎新婦の既婚者の親族が基本ルールです。
つまり、母親、祖母、既婚の姉妹、既婚の伯母・叔母であれば着ることができる着物なのですが、最近の結婚式では、黒留袖を着ているのは新郎新婦の母親だけということが多くなりました。
その理由としては、親族に未婚の方が増えたこと。
新郎新婦の姉や妹だけでなく、40代、50代の伯母・伯母が未婚のケースということもあり、どちらも既婚者の着物である黒留袖を着用することはできません。
反対に、既婚者の姉や妹がまだ20代の場合は、黒留袖は重厚過ぎて似合わないため、色留袖や洋装にするケースもあるようです。
さらに、セミフォーマルやカジュアルな結婚式が増え、既婚の親族全員が黒留袖という格式を重んじる結婚式が少なくなったことも一因といえるでしょう。
親族以外では、新郎新婦の服装の格に合わせなければならない仲人や媒酌人も、新郎新婦が正礼装であれば黒留袖を着用することになります。
しかし、こちらも結婚式の多様化で仲人を立てないことも多いため、結果的に、結婚式で黒留袖を着用するのは母親が主流となっているようです。
しかし、地域やご家庭によっては、既婚の親族は全員、黒留袖で統一するケースもあるため、親族が結婚式でどんな服装をするかは、予め両家の間で打ち合わせしておくことをオススメします。
色留袖は未婚・既婚と紋の数がポイント
結婚式で誰が色留袖を着用できるかは、紋の数によって変わります。
五つ紋の色留袖に、比翼仕立てだと、黒留袖と同格の正装になるため、新郎新婦の祖母や姉妹、伯母・叔母などの親族が着用することが可能です。
色留袖は未婚、既婚を問いませんから、未婚の姉や妹、伯母・叔母でも着用することができます。
母親も色留袖を着られないわけではありません。
結婚式が多様化した現在は、母親が色留袖を着用するケースもあるようですが、新郎新婦にもっとも近い立場でゲストをお迎えする母親は、いまでも、礼を重んじて最正装である黒留袖を着用するケースが圧倒的です。
三つ紋の色留袖は、仕立てるときに、結婚式以外でも着用できるように三つ紋にする方が増えたことから、親族の結婚式でも三つ紋の色留袖を着用する方も増えてきました。
また、結婚式で新郎新婦の母親を立てるため、母親よりも多少格が低くなるように、あえて三つ紋の色留袖を着用するケースもあるようです。
一つ紋の色留袖は、例えば、いとこやいとこの子どもの結婚式など、新郎新婦とはそれほど立場が近くない家族の結婚式などに着用できます。
結婚式にゲストとして招かれた、友人や職場の同僚なども、一つ紋の色留袖なら着用することが可能になります。
しかし、留袖は親族の着物と思っている方も多く、親族でもないのに留袖を着るのは周囲にまぎらわしい印象を与えることから、友人や同僚などのゲストには訪問着をオススメします。
結婚式で親族が留袖を着るときのマナー
結婚式にふさわしい装いをするためには、留袖の柄選び、留袖に合わせる帯や小物選びにも注意が必要です。
留袖の柄は気品を感じさせるものを
留袖は基本的に礼装として着用しますから、おめでたい席にふさわしい縁起の良い柄がほとんどです。また、どんな季節でも着用できるように配慮されています。
しかし中には、植物や自然、風景など季節を感じさせるものもあるため、着物に詳しくない場合はそういう柄を避けるか、お店のスタッフなどに確認してから選びましょう。
最近の留袖はモダンな柄も増えていますが、親族として着用するのであれば、気品や優雅さを感じさせるものを。とくに母親の黒留袖には、品格を感じさせる古典柄がオススメです。
20代の既婚の親族が振袖代わりに色留袖を着用するのなら、おしゃれで華やかな柄でもかまいませんが、個性的過ぎて悪目立ちしないように気をつけましょう。
若い方なら裾模様の面積が大きく華やかな柄が、年輩の方なら模様の位置が低くめで、落ち着いた柄のものを選ぶのもポイントです。
帯は格の高い袋帯で二重太鼓を結んで
留袖には格の高い袋帯を合わせて、二重太鼓を結ぶのがルールです。
お祝いの席にふさわしい金糸や銀糸がふんだんに使用されているもので、唐織や綴織、錦織といった格調高い織の帯が一般的です。
帯の柄は、高貴な有職文様や正倉院文様、縁起の良い吉祥文様が織り出されたものを選びましょう。
帯揚げ・帯締めは白地に金銀入りのものを
帯揚げや帯締めは、どちらも白色が基本となります。
帯揚げは総絞りや綸子の白色か、白地に金銀が入っているものを。
帯締めも白地に金や銀の織りを合わせた礼装にふさわしいものを選びましょう。
正礼装(第一礼装)として留袖を着用する場合は、色物の帯揚げ、帯締めは使用しないのがルールなので注意しましょう。
長襦袢、半衿、足袋も白色を合わせる
結婚式の留袖に合わせるなら、白い長襦袢を着用するのがマナーです。半衿や足袋も白色が基本です。
バッグや草履は礼装用を
バッグや草履は留袖の格の高さに合わせて、豪華なものを選びます。
白地に金、銀などを織り込んだ布地のものや、白地や金のエナメルなどであれば、フォーマルらしい装いになります。
また、かかとが4~5cm程度ある「礼装用」の草履を選ぶことも大切です。
バッグと草履は素材や質感、色味を合わせたセットのものを選ぶと、礼装らしさを演出してくれるアクセントになります。
留袖には末広を忘れずに
末広とは「祝儀扇」とも呼ばれている、留袖の帯に挿す扇のことをいいます。
骨が黒塗りで、金や銀の地紙のものが一般的ですが、白地に金箔押し、銀箔押しのものなどもあります。
礼装用の末広の中には、白骨の金銀扇子もありますが、黒留袖や五つ紋の色留袖には使わないのがルール。三つ紋以下の色留袖になら使用できます。
そこで、きものレンタリエでは黒留袖には黒骨の末広を、三つ紋の色留袖には白骨の末広をセットにしています。
結婚式の留袖にふさわしい髪型とは
結婚式で留袖を着用する場合、礼装にふさわしい上品な髪型にすることが大切です。
控えめなアップスタイルが基本
基本は、毛先をまとめたアップスタイルです。
おしゃれに見えるハーフアップや、毛先をちょっと遊ばせたり、アップにして毛先を垂らすスタイルなどが流行っていますが、留袖ではマナー違反となります。
髪をまとめるときには、シニヨンを耳より下の位置にして、高く結び上げたり、大きく膨らませるスタイルにならないように気をつけて。
アップにするには髪の長さが足りないショートや、ボブの場合は、普段よりもふんわりとしたボリュームのあるスタイルにすると、留袖にも似合う髪型になります。
髪飾りは扇形の簪ならOK
留袖の場合、使える髪飾りは簪(かんざし)のみです。
扇型で控えめな金や銀、べっこう、パールなどの素材であれば問題はありません。
振袖のときに使用したような揺れるタイプや、大きな花の髪飾りなどはマナー違反になるので気をつけて。
結婚式で留袖を着るために、わざわざ簪を買わなくてはいけないの?美容院で頼んだらその分の料金も必要?と思っている方も多いと思いますが、きものレンタリエでは、留袖にふさわしい簪が予めセット内容に含まれています。
そのため、どんな髪飾りがいいかで悩んだり、新たに購入する必要はありません。
ぜひ一度、チェックしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
結婚式での着物のマナーは、結婚式の多様化や未婚の方が増えたことで、時代とともに少しずつ変化しています。
例えば、結婚式では新郎新婦の親族は黒留袖を着用することが主流でしたが、最近は母親だけが着用しているケースが多くなってきました。
色留袖も親族は必ず五つ紋でしたが、三つ紋で結婚式に出席する方も増えてきました。
とはいえ、地域や家柄によっては昔ながらの格式高い結婚式を挙げる方もまだまだ多く、親族の留袖は五つ紋が基本という考えもあるでしょう。
結婚式が多様化していく中で、昔ながらの伝統や風習の捉え方、考え方が新郎新婦と親御さんの間ですれ違ったり、両家が常識だと信じていたことがまったく異なる場合もあります。
大切なのは、事前に両家がどんな結婚式にするのか、親族はどんな装いをするのかをしっかりと打ち合わせしておくことが、もっとも大切なマナーではないでしょうか。
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